大学の“年内入試”の影響が中学受験にも
最後に、大学入試事情から付属校・系属校人気の要因を考えてみよう。あまり知られていないことだが、有力大学において一般選抜の募集枠が年々狭くなっている実態がある(別掲表参照)。
20年前と比べると、ほとんどの大学で一般選抜枠が縮小している。20年前には60%台だった早稲田大、慶應義塾大は50%台しかなく、70%台だった明治大、青山学院大、立教大も60%台に縮小している。一般選抜枠が拡大しているのは表の7大学では中央大と法政大しかない。今回、日東駒専(日本大、東洋大、駒沢大、専修大)のグループも調べてみたが、拡大しているのは専修大のみだった。それだけ付属校・系属校からの推薦枠も増えているのだ。
近年の例だけ見ても、中央大学附属横浜(前横浜山手女子)、青山学院横浜英和(前横浜英和女学院)、目黒日本大学(前日出学園)、青山学院大学系属浦和ルーテル学院(前浦和ルーテル学院)といった学校が付属、系属、準付属となっている。中学受験の保護者はこうしたことをよく分かっているのだ。
わが子の大学受験時には一般選抜枠がさらに狭き門になるのではと警戒し、進学校に進んだときに一般選抜で進学することの大変さを考えて、付属校、系属校に入れようとしているのだろう。
近年、大学入試は“年内入試”(総合型選抜と学校推薦型選抜)で合格する受験生が急速に増えている。実際、私立大学では今やおよそ60%が年内入試での入学である。
受験生の親世代は「大学入試といえばほぼ一般入試」を意味していたが、いまや一般選抜での合格、入学は厳しい。そうした大学入試の現状も付属校、系属校志向を後押ししているのである。
【安田理(やすだ・おさむ)】
安田教育研究所代表。東京都出身。大手出版社にて雑誌の編集長を務めた後、教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年に安田教育研究所を設立。教職員研修・講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。各種新聞・雑誌、ウエブサイトにコラムを連載中。