宣伝カーの右後方の階段で「2728万円の裏金」と大きく書かれた紙を持ったひとりの男性が何かを叫んだ。その周りを警察官たちが着かず離れずで取り囲む。
前座の演説が終わり、いよいよ本命・萩生田氏がマイクを握った。いかに自分が地元に貢献してきたかのお決まり文句をとうとうと語る。一呼吸のたびに拍手。どこからか「統一教会!」の一言が聞こえた。相変わらず警察犬がウロウロしている。
指揮棒を持った警察のお偉いさんが部下に何か囁く。
しばらくすると、さっきの裏金問題を訴えていた男性の前には萩生田氏の運動員が駆け付け、ノボリで周囲からは見えないように囲ってしまった。男性による暴力行為やテロ行為があったわけではないので警察のほうで排除することは控え、男性の姿がほかの聴衆の目につかないよう、運動員がノボリで目隠ししたということなのだろう。
そしてマイクが高市氏に手渡される。高市氏は地元選挙区の奈良ではなく、八王子にやってきたことを少し恩着せがましく語った。演説では食料安保のことや日本をいかにして守るかということを長々と語った。そして石破茂自民党総裁のことはひと言も触れずに、萩生田氏といかに親密であるかを語り、大いに彼を持ち上げた。
演説が終わると、「お決まり」の手をつないでの結束アピールだ。
それにしても街頭演説は、候補者の顔が直接見られ、間近で肉声が聞けるのはよいが、やっぱり疲れる……。
有権者の楽しみを奪う開票速報の「ゼロ打ち」
どの政党にも属していない一有権者の立場からすれば、選挙の醍醐味というものは、開票日にビールでも飲みながら、テレビの速報を眺めながら、「やッ! あいつ落ちやがった」「えッ? あいつが通るのか」などと喜怒哀楽を露わにしながら楽しむことにあると私は思っている。
しかし最近ではどの報道機関も念の入った出口調査をしており、投票時間締め切りと同時にいきなり「当選確実」のテロップが流れている。これをメディア用語で「ゼロ打ち」と呼び、いかに他局より早くゼロ打ちを多く出すかを競っている。
だが野次馬根性旺盛な有権者としては、やはり選挙速報はせめてビール1本を飲む時間くらいの、抜きつ抜かれつを楽しむ猶予を与えてほしいものだ。