問題は経営統合をうまく機能させる「組織作り」ができるかどうか
このように両社の強み、弱みは補完的で完全とは言わないまでもプラットフォーム、基本システムの共用などを大胆に進めれば両社のカラーを出しながら今必要な商品の競争力と将来の自動車技術のリーダーシップを取るための開発を両立させることも不可能ではないだろう。
特に両ブランドの価値を並び立たせるカギとなるクルマの作り分けについては基本モジュールをルノー、日産、三菱自の3社が共有しながらそれぞれ独自性を出すという日産の経験を生かせるだろう。
問題は地力はまだまだある両社の経営統合をうまく機能させる組織作りができるかどうかだ。冒頭で述べたように経営統合といっても合併ではない。持ち株会社を設立し、その下で日産、ホンダ、将来的には三菱自も合流し、それぞれ独立した企業体として存続するという形を取ることになる。
その持ち株会社の権力構造がどうなるかは興味深い。単にホンダ出身者を会長、日産出身者を社長、あるいはその逆といった内部で固めるのは得策ではないだろう。日産とホンダが悪い部分で似ているのは、社内の権力抗争が常態化していることだ。
日産はルノー傘下入りする前は“銀座通産省”とあだ名されたほどの階層主義だったが、そのDNAは四半世紀経った今も受け継がれてしまっている。急激な業績悪化の気配を経営陣が察知するのが遅れたのも、現場と経営陣の意思疎通が希薄だったことや、それぞれの部署が責任回避に動いて正しい状況判断ができなかったことが影響したことは否めない。
ホンダのほうは派閥抗争というより社内のキーパーソン同士の足の引っ張り合いが起こるなど、下からは嫌われても上役の覚えがめでたければそれでよしという体質がある。売上高20兆円を誇る企業としては少々信じられないところもある。