意外にも両社の強みや弱みは相互補完できる?

 だが、果たしてこの経営統合で両社はうまくシナジーを発揮できるのだろうか。統合後、実務レベルでうまく融和が図れるかどうかということを別にすれば、両社の強み、弱みは意外に相互補完的で、相性は完璧ではないが悪くはない。

 アウトラインを見てみよう。まず日産だが、先行分野の研究への投資が活発で、世界の大学、研究機関との連携も巧みであるのが特徴。2018年に放逐されたカルロス・ゴーン元会長の置き土産のひとつだが、外部からの招聘を含めた人材の多様化が進んでいるのも強みだ。

 その半面、商品開発はその先行分野にリソースを食われる形で手薄となっている。また生産改革のつまずきでコストが高いのも難点で、常に利益が圧迫されている、言い換えれば理想のクルマを思うように作れないという状況だ。

 一方のホンダは市販車に搭載する現有技術の水準やコスト競争力自体は世界の中でもかなり良いポジションにいる。四輪が儲かっていないのは絶対コストのせいではなく優れた製品を高く売れないブランディング戦略の稚拙さの影響が大で、ポテンシャルは大きい。

 手薄なのはイメージとは裏腹に先端分野だ。2010年代にAI、エネルギー創出など先端技術分野の研究を「必要なものは機能ごと買えばいい」というトップの判断でバッサリ切ってしまった影響を今なお引きずっており、技術の大転換のトレンドをキャッチアップするのに四苦八苦している。

 特に電動化についてはトヨタに次ぐハイブリッドカーメーカーでありながら、バッテリーEVなど次の世代のクルマにそれを全くつなげられていない。