2023年12月25日、イギリス王室のメンバーがクリスマスの休暇を過ごすノーフォーク州サンドリンガムでのクリスマス礼拝に参加したアンドルー王子。今年は参加しないという(写真:Splash/アフロ)
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(国際ジャーナリスト・木村正人)

アンドルー王子と「特別な信頼関係」を構築

[ロンドン発]英王室のトラブルメーカー、アンドルー王子=王位継承順位8位=と「特別な信頼関係」を構築していた実業家を装う中国人スパイ「H6」が昨年入国を禁止され、特別入国管理上訴委員会に不服を申し立てていたが12月13日、英国家安全保障裁判所に退けられた。

 17日匿名が解かれ、H6はヤン・テンボ氏(50)と判明。BBCなど英メディアによると、英情報局保安部(MI5)は英企業GSKやマクラーレンに中国ビジネスについて助言していたヤン氏は中国共産党の「魔法の武器」中央統一戦線工作部(中央統戦部)のため働いていたとみている。

中国人スパイ「H6」ことヤン・テンボ(楊騰波)氏(Pitch@PalaceのYouTubeチャンネルより)
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 裁判官はヤン氏と中央統戦部とのつながりを示す証拠は十分ではないとする一方で、押収した証拠からヤン氏は中国共産党または中国国家による政治的干渉のため利用される恐れのある英国著名人と中国政府高官との関係を構築する立場だったと認定した。

 ヤン氏は自らの「ハンプトングループ・インターナショナル」という会社を通じアンドルー王子とビジネス上のつながりを築き、英政財界に人脈を広げていた。ヤン氏は中国が西側諸国に影響力を行使するための「エリート捕獲」作戦に関与していたとみられている。