韓国に渡った統一教会信者を放置して何が保守か

櫻井:この問題に対して、日本の政治家がどう動くのか。日本の保守を自認する人たちが何か言うのか。見ていても、誰も何も言わない。

 日本の伝統と国益と国民の権利を守るのが保守政党の自民党であるならば、本当に保守の政治をやっているのか、私には疑問です。統一教会の問題が、矛盾をあぶり出していると思います。

──合同結婚式などは有名ですが、統一教会は信者の結婚に介入することで、信者を支配してきたという印象があります。

櫻井:信者の結婚や性関係も含め、結婚する前に誰とどう交際するのかまでを宗教団体が仕切るというのは、昔の宗教にはある程度見られました。カトリックなどは、今でも離婚を認めません。

 ただ、信者同士を結婚させ、結婚した後の夫婦関係のあり方まで詳細にマニュアル化している宗教団体は統一教会の他にありません。結婚を通してプライバシーを掌握し、信者を支配しているのです。

統一教会の極めて特殊な教義

 統一教会はキリスト教系の新宗教と言われています。確かに聖書を使いますが、聖書の理解の仕方は、いわゆるキリスト教とはまるで違う。

 人間はエデンの園でサタンと不倫の性関係を結んで堕落したがために悪の血に染まっている。人間が救済されるためには、もう1回キリストが再臨し、神の血統によって再び人間が清められなければならない。だから、統一教会において、文鮮明と、文鮮明から清められた信者同士で血統を転換する儀式を行う──。

 これはキリスト教会では、異端や異説と呼ばれています。

 このような非常に特殊な教義に基づいて信者同士を結婚させ、神の血統を継いだ2世信者、3世信者を増やしていく。その結果、地上に天国を作る。これが統一教会という団体です。現在も2世信者同士の合同結婚式を行うので、いわゆる2世信者問題が起きています。

──政教分離が強く意識されているはずなのに、政治と宗教の結びつきに対する批判的な言説が少なくなった理由についても本書で言及されています。

櫻井:いくつかの側面があると思います。政治学や憲法論の分野で、これまで政教分離や信教の自由が議論されてきました。