アノーラとイヴァンの「ディール」
ある日、勤務する店のマネージャーが「ロシア語のできるホステスを探している客がいるから、そのテーブルに付いてほしい」と告げることからアノーラの人生は急展開する。自身のロシア語は流暢ではないという理由で気の進まないアノーラだったが、指定された席に着いてみると、そこにいたのは金回りの良さそうな若いイケメンだった。
年齢も近く(それ以前に店内で話していた男性客はオッサンばかり)、一気に親しくなったアノーラは後日、イヴァンの家族が保有するブライトン・ビーチの豪邸へ「お仕事」に赴く。そこで圧倒的な財力を目撃したアノーラはイヴァンと急接近。2回目にそのプール付き豪邸を訪ねた際、アノーラはイヴァンから1週間の専属となることを求められる。
アノーラがその対価として求めたのは現金一括での1万5000ドル(約230万円)。この価格設定が相場として適切なのかは知る由もないが、イヴァンは「あり得ない」というような仕草をして戯けつつ、即座に右手を差し出し「ディール」と告げる。
嬉しそうに「ディール、ディール」と言う男と言えば、先月のアメリカ大統領選に圧勝した男のことが当然思い出されるのだが、イヴァンの言う「ディール」には、約130年ぶりに敗戦後に大統領としてカムバックを果たす第47代アメリカ大統領にある自己愛のようなものは一切感じられない。
天真爛漫さを絵に描いたようなイヴァンは、1万5000ドルで手に入れたアノーラとの1週間に大した興味もなさそうで、すぐにテレビゲームに講じ始めるし、セックスも初心者レベルの下手さで、呆れたアノーラが手解きをするほどだ。