(元吉 烈:映像作家・フォトグラファー)
※以下の記事にはさまざまな映画のあらすじが出てきますのでご注意ください
敵軍の基地から盗んできた旧式の戦闘機の弾丸が切れた上に、緊急脱出システムも作動しない。性能で上回る敵の戦闘機に背後をとられて万事休すとなったマーベリック(トム・クルーズ)は、同乗する新人パイロットのルースター(マイルス・テラー)に「申し訳ない」と謝罪する。
背後の敵機パイロットが2人の乗る戦闘機をロックオンし、ミサイル発射ボタンを押した瞬間、その後方から現れた別のミサイルによって敵機はミサイルともども撃墜される。危機一髪で死を逃れたマーベリックとルースターが背後を振り返ると、燃え上がる炎と煙のなかから「皆さま、ごきげんいかがでしょうか? 救世主の登場です」と無線越しに話しかける満面の笑みの男が登場する。
その男の操縦する戦闘機が2人の戦闘機と横並びになり、ルースターが「元気そうだな」と無線で声を掛けると、たった今、2人の男の命を救った男は涼しい顔で「元気だよ、ルースター。とてもいい気分だ」と言い残して飛び去る。
この絶体絶命のピンチを救う男、ハングマンを演じるのはグレン・パウエル。1986年の大ヒット映画「トップガン」の続編として話題を呼んだ2022年の「トップガン マーベリック」(以下「マーベリック」)出演以来、ハリウッド映画の「男らしさ」の救世主となり得る俳優として注目を集めている。
「ミッション・インポッシブル」(1996年)、「マトリックス」(1999年)が大ヒットした1990年代後半、これからはブルース・ウィリスなどの筋肉系俳優に代わって、トム・クルーズやキアヌ・リーブスなどの2枚目スターが恋愛もアクションもやる時代になると言われた。
CG技術の進化によって、筋肉に頼らずとも、無数に放たれた銃弾を後ろに仰け反りながら逃れるようになったことが大きな理由だが、それから四半世紀、トム・クルーズが61歳、後にアクションもやるようになったブラッド・ピットが60歳、キアヌ・リーブスが59歳になったハリウッドでは、正統派俳優の高齢化問題と後継者不足が深刻になっている。