主人公で戦争写真家のリー(キルスティン・ダンスト)(写真:A24提供)主人公で戦争写真家のリー(キルスティン・ダンスト)(写真提供:A24)

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(元吉 烈:映像作家・フォトグラファー)

 2024年4月、映画「CIVIL WAR(シヴィル・ウォー=内戦、市民戦争)」が公開された。監督は「エックス・マキナ」「アナイアレイションー全滅領域」などのイギリス人アレックス・ガーランド。主に中規模予算のヒット映画を多く手掛けてきた製作会社A24による初のブロックバスター映画として、予告編が公開された当初から大きな注目を集めた。

 物語は、すでに2期目を終えて3期目の大統領を目指そうとする大統領の横暴に対して、テキサス州とカリフォルニア州が独立を求めて武装蜂起。それを武力鎮圧したアメリカ大統領(ニック・オッファーマン)が「分離独立論者を鎮圧し、人類史に残る勝利だ」とスピーチするシーンから始まる。

*以下、一部ネタバレを含みます

 現在のアメリカ大統領任期は最大で2期8年だが、憲法改正によって2期目の後には3期目があると言った大統領と言えば、今年の11月に共和党候補として大統領選を戦うことになるトランプを想像することは難しくない。そのうえ「内戦」と題名にあるのだから、保守vsリベラルがアメリカを分断する映画だと思った人は筆者を含めて多くいた。

 ところが、映画冒頭で明らかになるのは共和党の強いテキサス州と、民主党の強いカリフォルニア州がWestern Forcesという同盟軍を結成し、大統領に対して独立戦争を始めた世界の物語。現実には到底あり得そうにないテキサスとカリフォルニアの連帯があるなど、現実と離れたフィクションでもあるのだが、2024年のアメリカの現実に生きる観客にはただのフィクションと言って笑える映画でもない。

「CIVIL WAR」という刺激的なタイトルを持つ本作で、ガーランドは何を描こうとしたのだろうか。