(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
2023年、劇場版「スラムダンク」(正確には「THE FIRST SLAM DUNK」)は日本のみならず、韓国や中国でも爆発的人気を博した。
日本では2022年12月に公開されると、半年で観客動員数は1000万人を超えた。韓国では翌月の2023年1月に公開され、累計400万人の観客を数えた。
中国で公開されたのは4月。北京大学体育館で行われた先行上映には4000人が集まり、中国での観客動員数は累計で1800万人を超えた。いずれの国でも、観客の年齢層は30代、40代が主だったという。
バスケットに対する見方が180度変わった
わたしは基本的にアニメを見ない。しかしこれは見ないわけにはいかない。といって、映画館はめんどうだ。DVD化されるのを楽しみに待った。今年の2月28日に発売されることは事前に知っていた。
同日、レンタルも店頭に並んだ。即日借りた。
原作・脚本・監督はもちろん井上雄彦である。上映時間は124分だ。
わたしは長い間、バスケットボールには冷淡だった。あんな交互に点数を入れ合うようなスポーツのどこがおもしろいのだ、と思っていた。
野球のホームランや、ラグビーのトライのような派手なプレイがないものだから、「ダンク」などといって、ゴールリングにボールを叩き込む無理やりな技を考案していると、冷ややかに見ていた。
だから、井上雄彦の名作「スラムダンク」の人気は知っていたが、バスケットを敬遠するあまり、全然読んでいなかった。しかし偶然にも、2019年度全国高校バスケットボール選手権大会、いわゆる「ウインターカップ」の決勝戦をフルに見たことがきっかけで、バスケットに対する見方が180度変わった。鮮烈だった。
生意気にもにわかファンになった。折にふれ、バスケットの試合を見るようになった。そしてその後、「スラムダンク」新装再編版全20巻を読んだ。2021年のことである。
映画は、青空が映し出される場面から始まる。沖縄の空だ。
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