(元吉 烈:映像作家・フォトグラファー)
服用すれば7日間だけ、若い自分、特に羨望の眼差しを一身に浴びる美しい自分になれるクスリがあるとすれば何がしたいか。
若さと美貌を謳歌してショウビジネスで成功し、いい身体をした男性(あるいは女性)を手玉にとって遊び、世間からもチヤホヤされたい。中年を越えた人間であれば男女問わず、一度は夢想するだろうか。人は皆、チヤホヤされたい、しかも過去にチヤホヤされた経験のある人ならば尚更だ。
今年5月に開催されたカンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「The Substance」(監督:コラリー・ファルジャ)は、50歳になって落ち目にあるエアロビクス・インストラクターのエリザベス(デミ・ムーア)が検診に訪れた病院で、若い医師から、あるクスリ=The Substanceを接種すると、7日間周期で若い自分(Better version of yourself)になれるのだが試してみないか、と言われることで始まる。
もちろん、そんな話を鵜呑みにするエリザベスではないのだが、かつて一世を風靡し、いまもロサンジェルスを眼下に望む高級マンションに住む一方で、年齢を理由に番組を降板させられそうになっている彼女にとって、そのクスリには抗いがたい魅力がある。
果たして、禁断の果実の誘惑を断つことができなかったエリザベスは(一度は冷静になって家に帰ってきたのに!)、The Substance の接種を決断する。
※以下ネタバレを含みます。また、掲載している写真には強烈なモノも含まれているので、そういうのが苦手な方はお控えください