さらに積み上がる日本企業のキャッシュ
また、各種統計から確認されるように、日本企業部門の待機資金は積み上がっており、買収余力は枯渇することはおろか強化されている印象もある。
例えば、日銀資金循環統計における非金融法人が抱える現預金を例に取るが、今年4~6月期時点で370兆円弱、名目GDP比でも60%前後まで高まっている。
後者の数字に関し、同時期の米国やユーロ圏と比較するとそれぞれ6%前後と25%前後であり、日本企業の現預金の厚さが目立つ(図表③)。国内市場が縮小すること自体は既定路線と考えれば、今後も日本企業による海外企業買収は盛んに行われる素地があるだろう。
【図表③】
片や、「2030年までに100兆円」が政府の残高目標として定められている海外から日本への対内直接投資はまだ動意があるとは言えない。
最近ではセブン&アイに対する買収提案が話題に上がったものの、生活基盤に関わる業種ということもあって、話はどうやら円滑に進んでいない。今後も、円安ゆえに割安な日本企業に食指を動かす向きはあるかもしれないが、政府目標に接近できるのかは不透明である。