再び増加し始めた対外直接投資が意味すること
実体としては生産設備を海外移管するグリーンフィールド投資ではなく、今回報じられたケースのような海外企業買収としての対外直接投資がけん引してきた部分も大きそうだが、それとてビジネス拠点としての国内の限界を察知したという動きであり、いずれも同じ問題意識に突き動かされた経営判断と言って差し支えないだろう。為替需給においては円売りを示唆する材料である。
対外直接投資はパンデミックを契機としてピークアウトしていた。
2022年に過去最大を記録した貿易収支赤字だが、それ以降はその漸減傾向が注目されていた。その中で「対外直接投資による円の売り切り」というフローは比較的注目度が落ちていたのは事実だ。
最新の数字が入手可能な1~10月分合計で比較すると、パンデミックを契機として2011年以降に続いてきた対外直接投資のトレンドがいったん途切れ、2019年以前の水準を回復できない局面が続いてきたことが分かる。
実際、こうした状況下で日本の企業部門の海外買収余力が枯渇しつつあるかのような言説も目にした。だが、今年1~10月合計は過去10年間で最大での対外直接投資が実行されており、これも執拗な円安相場に寄与した疑いはある(図表②)。
【図表②】