142年前の中国人労働者移民排斥法の再来

 米国は元々、移民と奴隷と原住民からなる国家。自らを「移民国家」であることを誇ってきた。

 トランプ氏と共和党支持者は、その看板をかなぐり捨ててもメキシコをはじめとする中南米諸国から不法に入国してきた移民を強制的に出身国に送還しようとしているわけだ。

 その理由は、前述のように米国市民の職を奪い、犯罪、麻薬、売春などで健全な社会生活を脅かしているからだという。

世論調査では米国民の54%がトランプ氏に賛同している)

scripps.com/scripps-news-ipsos-poll-reveals-a-majority-of-americans-support-mass-deportation-of-undocumented-immigrants/

 彷彿されるのは、1882年、米議会が議決した中国人労働者移民排斥法だ。

 1870年代の経済不況の中、鉱山や鉄道敷設工事で低賃金で働く中国人移民は米市民の職を奪うばかりか、辮髪や中国服・中国語を捨てず米社会に同化しないとして白人を中心に反発が広がり、これを受けて移民排斥主義者のチェスター・アーサー第21代大統領が発議、米下院が賛成多数(賛成201、反対37、棄権51)で可決成立させた。

「移民の国」が初めて制定した移民制限法だった。

 その結果、中国移民の数は1880年の10万人から1920年までに4万人ほど減り6万人台になったが、米国は労働力激減で生産性は落ち、全労働者の収入は伸びず、得したのは賃金が上がった鉱山労働者ぐらいだった。

library.hbs.edu/us-immigration-changes-are-finally-coming-but-not-the-right-ones

 中国人が米国民の職を奪うという名目よりも、黄色人種に対する白人の人種的偏見によって中国人を排除した側面が大きい。

 その結果は裏目に出た。こうした「黄禍論」はその後日本人排斥に繋がっていった。