利上げに際して、賃上げ動向を重視している植田総裁。2025年の春闘では歴史的な賃上げ幅も囁かれている(写真:ロイター/アフロ)
利上げに際して、賃上げ動向を重視している植田総裁。2025年の春闘では歴史的な賃上げ幅も囁かれている(写真:ロイター/アフロ)

 12月18〜19日、日銀の金融政策決定会合が開催される。利上げの有無が注目を集めるが、2025年の円相場見通しを考える上で重要なのは、利上げがどこまで続くかという利上げの持続可能性である。0.75%で止まるのか、1%を超えるリスクシナリオもあり得るのか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

2025年の円相場はどう動くか?

 時節柄、2025年の円相場見通しについて尋ねられることが増えている。本来は需給、金利の観点から丁寧に掘り下げることで全体感を作り、見通しを提示すべきだが、今回は特に問い合わせの多い円金利の観点から、筆者なりの現時点の所感を示しておきたいと思う。

 目下、12月18~19日の金融政策決定会合における利上げの有無に関心が集中しているが、今後1年間を見通す意味では、利上げの持続可能性を検討する必要がある。

 日銀の植田総裁は前回(10月31日)会合後の記者会見で、「利上げ見送り」と同義のメッセージとして使われていた「時間的余裕はある」という表現を使わないという方針を示した。このフレーズが使われていた背景には、「米国経済の下振れリスクが大きい状況では利上げは難しく、現在は不透明感が大きいのでまだ待てる」との思惑があった。

 ということは、米国経済の堅調が確信されるほど、利上げの障害が小さいということになる。

 今回の本コラムでは詳述しないが、2025年の米FRB(連邦準備理事会)の政策軌道に関していえば、筆者は「利下げの終わり」が争点化するのではないかと予想している(この点、米金利編としては別の機会で議論を示したいと思う)。

 こうした想定と平仄を合わせるのであれば、日銀が粛々と利上げすることについて、少なくとも海外環境からの阻害要因は小さいという話になる。

 もちろん、第二次トランプ政権にまつわる不透明感は大きいが、どちらかと言えば米金利が上振れる方向での不透明感であり、利上げを検討する際の障害にはなりにくいように思える。海外要因に照らせば、利上げを待つ「時間的余裕」はもう使われそうにない。

 もっとも、重要な材料になるのは、海外環境よりも国内環境のほうである。