実は、あまり指摘されないことですが、選挙結果に大きな影響を及ぼしたのは、3位になった清水貴之さんの動向です。清水さんはもともと維新の参議院議員で、10月の衆院選で兵庫8区からの出馬を予定して準備を進めていた。

 そのさなかに兵庫県では斎藤さん問題が持ち上がり、最初の知事選で斎藤氏を推薦していた維新の会も、ある意味、斎藤さんを見切って不信任案に同意しました。その結果、出直し知事選で維新からも誰か候補者を立てないといけないということから清水さんに白羽の矢が立った、という経緯がありました。

 ただ清水さんは、幅広い層から支持を集めたいということで、維新を離れ、無所属での立候補となりました。選挙の構図としては、結果的にはそれがミスジャッジであり、清水さんにとってはマイナスに作用してしまったと思います。自ら維新の政党ラベルを脱ぎ捨てた結果、維新支持層を固めることもできなかった。出口調査でも、維新支持層の支持に関して、清水さんは稲村さんにも後れを取っているという結果が出ていました。

 もし清水さんが維新支持層を固められていたら、斎藤さんが埋めるべき票差はもっと増えていました。その場合、もしかしたら当選したのは斎藤さんではなく稲村さんだった可能性もあったのではないかと思います。

偶然も味方につけての勝利

――ということは今回の斎藤さんの選挙戦略を、他の政治家の人が真似しようと思っても、なかなか難しいと?

米重 はい。今回の選挙結果に関しては、斎藤さん自身が戦略的に仕掛けた部分よりも、ここまで述べてきたような周囲の環境などさまざまな条件が偶然揃ってあのような結果が出たという面もかなり大きいのではないかと思います。事前にマスコミにさんざん叩かれていたというマイナスイメージ、それに伴う絶大な知名度などの条件があって、そこに本人以外のSNSでの大きなアシストがあって一気に支持を増やしていった。

 と考えると、別の候補者がそのまま真似しようといっても、再現性はありません。偶然には再現性がないからです。ただ、立花さんが実践したような、当選を目指さず選挙に出馬し、別の候補をSNS等でアシストするという応援の仕方は再現ができうる方法なので、こちらは今後の選挙にも影響があるのではないかと思います。そこに、公選法上の規制を強めるべきだとして焦点が当たる可能性もあるでしょう。