受け入れ先の中小企業の言い分

吉水:また、妊娠した技能実習生のために、技能実習生の枠を一つ押さえておかなければなりません。つまり、その人が在籍していると、代わりの技能実習生を入れることができないということです。

 さらに、企業は技能実習生を受け入れるために、研修費用や監理費など合計で数十万円を投資しています。しばらく働けないという状況はつらく、「やめさせて代わりの者をすぐに入れたい」という発想になりがちです。

──財政的に体力のない企業が、妊娠した技能実習生を追い出したがるということでしょうか。

吉水:そうですね。男女雇用機会均等法の中に「妊娠した女性の労働者に対しては軽作業を用意する」という決まりがあるのですが、数カ月間その人にそれだけやっていただけるような軽作業が用意できない(適当な仕事がない)というのが多くの受け入れ先企業の現実のようです。

 人数の少ない職場で、皆が大変な仕事をしている中で、1人だけが軽作業をしていると、不平等感が広がるという恐れもあるようです。

技能実習生の存在なくして回らない現場も多い(写真:共同通信社)技能実習生の存在なくして回らない現場も多い(写真:共同通信社)

 技能実習制度は大手企業向けではなく、中小零細企業向けにできていて、人手不足の穴埋めという側面があります。これは、技能実習制度が育成就労制度に変わっても変わりません(※)。ですから、いろんな事態が発生することに対して、国側がもっとサポートを用意しなければならないと思います。

※育成就労制度:これまでの技能実習制度を見直した外国人雇用制度「育成就労制度」を含む改正出入国管理法が、6月14日の参議院本会議で可決・成立された。2027年までの施行を目指す。

 たとえば、技能実習生が妊娠した場合、受け入れ企業にとってその人を置いておくメリットは乏しいので、国が補助金を出してあげないと、こうした問題はなくならないと思います。実際には、そのような場合に補助金が出る仕組みも既にあるのですが、受け入れ企業に全く周知されていません。

──技能実習生を受け入れる時に、ちゃんとした説明を国から受けないのですか?

吉水:十分な説明を受けていないようです。本当は監理団体や登録支援機関が、様々なケースにどう対応すべきか、受け入れ企業にしっかりと説明する必要があります。でも、安価な労働力として技能実習生を見ているので、そうした努力を怠るのです。

──本書を読んでいると、監理団体にも問題があるという印象を受けました。どのような方々が監理団体を担っているのですか?