未来は実質賃金や経済成長の状態次第
次に、図表3で、経済成長別の労働力不足の見通しについても確認しよう。こちらもグレーが標準シナリオだ。
その左に位置しているのが内閣府の成長実現ケースを基に推計を行った高成長シナリオ(全要素生産性上昇率を1.4%程度に仮定)で、この場合の労働力不足は、1日当たり3428万時間にのぼる。この時の労働力不足は、標準シナリオの1775万時間と比べると2倍近く深刻なものであり、2023年時点の1日当たり960万時間と比べると、およそ3.5倍深刻なものだ。
他方、図表の右側に位置する低成長シナリオ(経済成長率を標準シナリオの半分に仮定)の場合の労働力不足は、1日当たり1134万時間にとどまっている。
■図表3 経済成長別の2035年の労働力不足の見通し
このように、実質賃金や経済成長の状態によって、労働市場の見通しは異なる。例えば、最も労働力不足が深刻になる高成長シナリオでは、2023年よりも労働力不足が緩和する賃金上昇シナリオと比べて、労働力不足の時間数は4.6倍にもなる。そして、これほど外部環境に差が出るとすれば、企業が認識すべきリスクもまたそれぞれ異なるはずだ。