労働力不足が今より緩和するケースも

 未来起点の分析の重要性を認識し、実際に分析する際に前提条件として必要となるのが、労働市場の見通しだ。ここではパーソル総合研究所と中央大学が行った「労働市場の未来推計2035」の結果から、異なる前提条件下での労働市場の見通しを見てみよう。

 この推計では、2035年時点の労働力不足を、1日当たり1775万時間と推定している。2023年は、1日当たり960万時間の労働力不足であったため、1.85倍深刻になると解釈できる。この推計結果を標準シナリオとし、実質賃金と経済成長が異なる場合の労働力不足についても算出している。順に確認していこう。

 まず、図表2を基に、実質賃金別の労働力不足の見通しについて確認しよう。左側のグレー部分が先に紹介した標準シナリオだ。そして、図表中央の賃金一定シナリオは、2023年の実質賃金(1799円、時給)が2035年まで変動しないものとして、労働力不足を推計している。

 このシナリオでは、2035年の労働力不足は1日当たり1389万時間となり、標準シナリオに比べると労働力不足が若干緩和している。

■図表2 実質賃金別の2035年の労働力不足の見通し

出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035
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 また、図表右側の賃金上昇シナリオは、2035年時点の実質賃金が2000円にまで上がるものとして労働力不足を推計した結果だ。1日当たりの労働力不足は743万時間となり、2023年の960万時間よりも緩和した値となっている。