結局、処方箋は利上げか
もちろん、だから「日銀は利上げすべきではない」という話ではない。7~9月期のGDPにおける個人消費は非常に強いものであったが、その数字を理由に利上げを強弁するのは無理筋だという話だ。
利上げがあるとすれば7月同様、「想定外の円安によるインフレリスクの高まり」と整理する方が腑に落ちるし、その可能性が高まっているのは間違いない。今後、個人消費が弱含むとしても、それは恐らく円安経由でインフレを輸入していることに起因しているはずであり、どの道、利上げは処方箋として検討せざるを得ない。
もちろん、米11月雇用統計を筆頭にまだ見るべき指標はたくさんあるため、本稿執筆時点で確たる日銀プレビューはできる状況にないが、1月の展望レポートを待たず、12月に利上げが行われる可能性は相応に高いように思われる。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年11月20日時点の分析です
唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。