名目GDPと実質GDPの格差が広がる理由
上述したように、今回の結果を日銀がどう汲み取るかが最大の関心事となる。これで実質GDP成長率は2四半期連続のプラスであり、堅調と言い張れないことはない。しかし、過去2年間の円安を通じ、家計部門を中心としてインフレの痛みが浸透しつつあるのも間違いない。
図表③に示すように、名目GDPと実質GDPの名実格差は拡大の一途を辿っている。
名目GDPに対する実質GDPの規模は着実に小さくなっている。定額減税を受けた今期の仕上がりはさておき、インフレ税により可処分所得が目減りし、基本的には個人消費が思うように伸びていないというのが近年の日本で起きていることだろう。
円安を背景としてインバウンド需要が高まり、外国人の消費・投資意欲に近い財・サービスから値段が押し上げられ、日本人の消費・投資意欲が抑制されているという側面もある。
円安を通じて日本はインフレを輸入している状態であり、そのインフレに見合った名目賃金の上昇が確保されていないので実質GDPは思うように伸びていかない。
雇用者報酬を見れば、名目で伸びている一方、実質で減っているのだから必然の帰結である(図表④)。10~12月期は定額減税や自動車販売にまつわる一時的押し上げ効果が剥落するため個人消費は減少に転じる可能性もある。