高齢者・女性の労働参加が活発でない中小製造業
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、出生率、死亡率ともに中位で推移した場合の日本の総人口は、2056年に1億人を下回り、2070年には8700万人まで減少する見込みである。
人口減少と高齢化が進むなか、企業は高齢者や女性の労働参加により人手を確保してきた。しかし、製造業についてみると、ほかの産業ほど高齢者や女性の労働者が増えているわけではない。
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」をみると、製造業にかかわる職業の有効求人倍率は、2015年以降、一貫して1を上回っている。
このことから、製造業では求人があるにもかかわらず、高齢者や女性の労働参加が活発ではないことがうかがえる。製造業は量的な人手不足に陥っていることがわかる。
「量的」だけでない、「質的」な人手不足も
ものづくりの現場には、経験や技能を必要とする仕事が少なくない。人手不足の問題に対応するうえでは量的な不足だけでなく、質的な不足にどう対応していくかも考えていく必要がある。
経済産業省・厚生労働省・文部科学省編『2019年版ものづくり白書』によれば、特に確保が課題となっている人材は、大企業、中小企業ともに「技能人材」が最も高い(図-1)。特に中小企業では、「技能人材」と回答した企業が59.8%と半数を超えている。中小製造業における技能の重要性がわかる。
技能人材の不足を解決するためには、技能をもつ人材を採用するか、人材を採用したうえで技能を習得させる必要がある。
しかし、指導する人材が不足していたり、人材育成を行う時間を確保できなかったりなど、質的な人手不足を解決するには多くの課題がある。