中国の次にターゲットになる国の名前

 バイデン政権は、経済安全保障の確保のために、先端半導体等の機微技術に関連する分野での中国とのデリスキング(リスク低減)を進め、同盟国やパートナー国との安全で信頼できるサプライチェーン、いわゆるフレンド・ショアリングの構築を目指した。

 バイデン政権が主導したインド太平洋地域の14カ国が参加する「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)」は、同地域におけるフレンド・ショアリング構築の重要な柱である。

 米国のパワーを背景にした二国間ディールを好むトランプ氏は、多数国間の経済枠組みの構築には消極的だ。トランプ1.0では、政権発足直後にバラク・オバマ前政権が推し進めた「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」からの離脱を表明したが、トランプ氏はIPEFを「第2のTPP」と呼び、大統領就任初日に離脱する意向を明らかにしている。

 フレンド・ショアリング構築は、トランプ2.0の政策目標とはならず、米国を含む形では停滞することになるだろう。

 さらに、選挙戦でトランプ氏は、大半の輸入品に10~20%の関税を課す「普遍的基本関税」(universal baseline tariffs)の導入、相手国の関税率が米国の同製品関税率より高い場合に相手国と同率の関税を課す「トランプ互恵貿易法(相互通商法、Trump Reciprocal Trade Act)」の成立を訴えていた。

 高関税賦課は、米消費者の負担増につながる、相手国からの対抗措置を招くとの批判にも、トランプ氏は耳を貸さない。

 こうした全世界を対象にした関税に加え、特定国を標的とした関税が課される恐れもある。中国に加えて、メキシコやベトナムが標的とされる可能性が高い。

 両国とも、米国の貿易赤字が大きいだけでなく、中国製品の米国への輸入の「迂回地」とみなされているためだ。メキシコとは2026年に米墨加協定(USMCA)の見直しも控えている。トランプ氏が、関税引き上げやその脅しを梃子に、両国に対米貿易黒字の削減や中国に対する規制強化等の措置を迫ることが考えられる。

ベトナムの自動車工場。ベトナムもトランプ関税の標的になる可能性がある(写真:AP/アフロ)ベトナムの自動車工場。ベトナムもトランプ関税の標的になる可能性がある(写真:AP/アフロ)

 欧州連合(EU)は、トランプ2.0において米国が関税を課してきた場合には、交渉による解決を目指す姿勢を示している。

 ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、すでに米国産液化天然ガス(LNG)の輸入増を米国との交渉カードとする意向を示している。同時に、EUは米国による関税賦課への対抗措置として、米国に関税を課す場合の対象品目リストを準備していると報じられている。