「返り血」も恐れない対中貿易投資規制も
「保護」の取り組みは、トランプ2.0で一層強化されるだろう。特に、中国を対象とした貿易投資規制が拡大・厳格化することが見込まれる。
対中輸出管理・投資審査等の強化はバイデン政権下でも進んだが、規制対象を安全保障の確保に真に必要な技術・製品に絞り込む、いわゆる「スモールヤード・ハイフェンス」の方針が掲げられた。
規制強化を求める議会の圧力もあり、半導体に関する輸出管理などで「スモールヤード」は拡大傾向にあったが、規制が米国経済や米企業にもたらす悪影響を可能な限り限定する配慮がなされていた。そのため、バイデン政権の規制は外科手術用のメスにたとえられる。
それに対して、トランプ2.0が使うのはハンマーだ。国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員は、議会で対中規制の強化・拡大のための法案を主導してきた。直接の理由は香港問題への対応だが、その対中強硬姿勢から、中国政府によって中国への入国禁止等の制裁を科されている。
国家安全保障担当大統領補佐官に指名されたマイケル・ウォルツ下院議員なども対中強硬派として知られており、中国による報復措置も含め、米国経済や米企業への「返り血」を顧みない対中貿易投資規制の拡大・厳格化が進められるリスクがある。
これ加えて、中国に対しては、世界貿易機関(WTO)で全加盟国に認める義務がある最恵国待遇(MFN)の撤回、電子機器、鉄鋼、医薬品など重要製品の対中輸入を4年間で段階的に停止、中国からの輸入品に60%超の関税を課すことなどを打ち出している。
さらに、メキシコで生産される中国メーカー車の輸入にも高関税を課すとしている。対中貿易投資規制の拡大・厳格化と相まって、これらの措置が発動されれば、中国からの対抗措置を招き、米中間のデカップリングが進行することになるだろう。