フランスは約1300人、ドイツでは約400人
米国のような徹底した政治任用制度ではないにしても、その他の国でも政治任用の考え方は導入されています。
例えば、フランスでは、各大臣の政策スタッフや省庁の高級官僚のおよそ1300人が政治任用されています。米国のように政権交代によって一気に入れ替わるのではなく、適切な時期に随時入れ替えが行われるのが特徴。各大臣の「側近」が任用されるケースが多いとされています。
ドイツでは、政治任用に該当する連邦政府の職員は約400人。首相ら政治家と意見が合わない場合、その幹部職員を一時退職させる制度(将来の復職を可能にする仕組み)もあります。
英国はどうでしょうか。米国と同様、二大政党制の英国は、議院内閣制をとっていることもあって、政権交代によって省庁の幹部らが大幅に入れ替わることはありません。
政府機関で働く公務員は、その専門性と政治的中立性に基づいて時々の政権の意向に従い、政権を忠実に支える義務を持つとされています。政権側も、公務員の中立性を尊重する責務を負い、幹部を含めた公務員の人事への介入は自制してきた伝統があります。
ただ、政治主導の政策を実現していく狙いから、外部の専門家らを「特別顧問」として、政治任用する仕組みがあります。特別顧問に就くのは70人程度で、その役割は各大臣に対する助言・支援に限定されています。
日本で政治任用に該当するのは、首相補佐官や官房副長官、内閣情報官、内閣危機管理監、大臣秘書官、副大臣、政務官などです。ただ、政治家や公務員、またはそれらの経験者が指名されるケースが大半。政治任用者の顔ぶれが大きくクローズアップされるケースもほとんどありません。
米国ではいま、トランプ氏の政権移行チームによって、政権幹部の人選が着々と進んでいます。その中には、薬物使用や身分証明書の不正使用、選挙資金の私的流用など数多くの疑惑を抱えたマット・ゲーツ元上院議員を司法長官に起用するといった動きも含まれています。
ただ、第2次トランプ政権の主要ポストが本格的に決まるのはこれから。世界があっと驚くような人選は、さらに続くのでしょうか。政治任用の動きには各国が注目しています。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。