2.7~9月期は異例の経済停滞持続
これまでの中国経済政策運営は、経済の質の向上重視に転じた後も、成長率の確保が引き続きかなり重視されていた。
実際に実質成長率の推移を前期比ベースで見ると、新型コロナ感染拡大で大混乱した2020年が終わり、ある程度安定を回復した2021年以降については、上海市の都市封鎖という特殊要因が発生した2022年第2四半期を除き、2四半期続けて5%を割ることはなかった(下図参照)。
これは経済が減速すると、それを察知した中国政府が即座に景気下支え策を実施し、経済の安定確保に努めてきた結果である。
実質経済成長率(季節調整済前期比年率・単位%)の推移
しかし、足許の状況はやや異なる傾向が見られた。
本年の実質成長率前期比の推移を見ると、1~3月期+6.0%から4~6月期+2.0%へと急減速した。
その原因は地方財政の財源不足から財政支出が減少し、5月後半以降、公務員給与の支給や政府が購入した商品の代金支払等が滞ったため、消費が急減速したことによるものだった。
この問題は7月中旬に4~6月期のGDP等主要経済指標が発表された時点で明確に認識されていた。
その直後の7月末には政治局常務会議が開催され、年後半の経済政策運営方針が決定された。
特に目立った新たな施策が発表されたわけではなかったが、5月後半以降の経済減速が顕著だったため、7月以降景気下支え策を実施するよう全国各地の地方政府に対して中央政府から指示が下されていると考えられていた。
その政策が効果を示すことによって、8月以降、消費、インフラ建設投資、工業生産等の主要経済指標に一定の改善が見られることが予想されていた。
しかし、9月中旬に8月の主要経済指標が発表されると、工業生産、サービス業生産、消費、投資等主要経済指標が軒並み低下していることが明らかになった。
中国経済を分析するエコノミストはこの数字を見て一様に驚いたのではないかと推測する。
その状況は10月中旬に公表された9月および7~9月期の主要経済指標を見ても、大きな変化はなかった。