燃料電池車のニーズはどこに?

 こうした中、ホンダは「2040年時点でグローバルで販売する新車の100%をEVまたはFCEV」という電動化の達成目標を掲げている。目標達成に向けた現状の取り組みとしてはEVが主軸だが、2040年に向けてはFCEVがどれほど普及していくかが注目されるところだ。ホンダとしてはEVだけではなく、FCEVも含めて電動車としての「ホンダらしさのあるべき姿」を模索している真っ最中だ。

 今回の試乗会場でも、ホンダ関係者は「人(ひと)中心としての燃料電池車のあり方」という表現を使っていた。換言すれば、「ユーザーが燃料電池車をどう使いたいのか、その声をしっかりと聞きたい」ということだ。

ブラグインハイブリッド車として充電・給電が可能。給電用には一般家電が使いやすいようなアダプターを用意(写真:筆者撮影)

 試乗会場では、CR-V e:FCEVがプラグインハイブリッド車であることを強調し、各種家電に給電できる様子を紹介していた。また、災害時や各種イベントなどで大出力の電気が必要な場合に専用機器を使って給電できるシステムについても改めて提案していた。

専用機器を使って大出力で給電する様子(写真:筆者撮影)

 現状のFCEVは水素ステーションの制約もあり普及にはほど遠い状況だ。それでも、2040年に向けて、FCEVのニーズを地道に掘り起こし、ユーザーの声に真摯に向き合っていきたいというホンダの意思がそこにある。年間70台にすぎない限定車だが、出して、反応を見ていかなければ、何も始まらない。

 走るためのクルマとしては高いレベルにあるCR-V e:FCEV。「走る」こと以外の活用方法も含め、燃料電池車にどのようなニーズがあるのか、改めて問われている。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
Wikipedia