ポスティングシステムの改善が必要に
ポスティングシステムに関しては過去、日米球界による協議でルールの改変が行われてきた。ただし、メジャー側は、日本人選手の移籍志向が強いことも念頭に、メジャー側に有利になるような変更を強いている。
「25歳ルール」も中南米の若手選手の“青田買い”の防止が目的であるのであれば、日本からのポスティングシステムによる移籍は適用から外すことを求めることも可能なのではないか。25歳未満の移籍は容認しないという、12球団統一の“防衛ルール”の制定も検討すべきではないか。
ただ、日本球界の“防衛”に関しては、選手サイドや、場合によっては、メジャーへ選手を送り出すことに必ずしも否定的ではないファンの支持が得られるかも不透明だ。
今季限りで日本ハムでの現役を引退し、米大リーグのブルージェイズでフロントに転身することを明らかにした加藤豪将氏は自身のX(旧ツイッター)で「佐々木投手がメジャーに挑戦する事で、今後NPBがどのように変わるか。個人的には選手が日本に残りたいと思える環境を整える事がメジャーに“行かせない”という姿勢よりも大切だと感じる。日本の野球をより魅力的にし、選手がここでキャリアを築きたいと感じることがNPB全体の成長に繋がるのではないか」と投げかけた。
ただ、現実は厳しいだろう。
佐々木投手のメジャー移籍が、日本球界の空洞化を加速させる起点となるか、それとも、メジャー移籍の年齢や条件を考え直す契機となるか。いずれにしろ、日本球界の置かれた苦しい状況を物語ることには変わりない。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。