倉吉MICE観光協会による廃線跡ウォーキングの模様。4~11月の間、月1回開催。定員50名で人気が高いが、山守トンネル内も特別に見学できる(写真提供:倉吉観光MICE協会)

台湾から結婚式の前撮り写真の撮影に来るカップルも

 線路の上を歩いていくと、ほどなく目の前に竹林が現れる。丈の高い竹林の中に1本の線路が通っていて、竹の一部がレールとレールの間に繁茂している。

 この風景がSNSで大変な人気になり、インバウンドの観光客も増えた。最近では台湾から訪れ、結婚式の前撮り写真を撮影するカップルもいるという。取材日は小雨が降っていたが、かえって幽玄な雰囲気に包まれ、竹林に囲まれて方向感覚を失うような錯覚を覚えた。

泰久寺駅ホーム手前に残る落石注意の標示が、山間部に入っていることを物語る(筆者撮影)

 そのまま歩いて行くと、左側に横たわった竹が見える。これは教育旅行で訪れた学生が体験学習として竹からベンチやテーブルを作ったもの。

中学生など教育旅行で訪れた生徒たちが間引きされた竹で作ったベンチ。記念に学校名と訪問日も記されていた(筆者撮影)

 竹は自生力が強く1カ月で数cm伸びるので、定期的な間引き作業を要するが、この地に鉄道が走っていたことを知らない世代にその体験作業を通じてその歴史を肌で感じてもらえる。さらに、来訪者がひと休みできるようにした。

 竹は“竹灯り”としても再利用され、観光振興にも一役買っており、「今、あるものを生かす」という地元の観光協会ならではの取り組みに感心した。