マイナ保険証の読み取り機(写真:共同通信社)マイナ保険証の読み取り機(写真:共同通信社)

 マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」。移行作業が進められており、12月2日には現行の保険証の新規発行が終わる。マイナ保険証への移行を巡っては不満と混乱も広がっているが、そもそもなぜこのような混乱が起きているのか。マイナンバー制度に対する国民のアレルギーがもたらした「マイナンバーの呪い」と、マイナ保険証の根本的な欠陥について専門家が語る。(後編)

<「前編」から読む>

※医学通信社『月刊/保険診療』10月号より転載

(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)

マイナ保険証に潜む根本的な問題点とその対応方法

 マイナ保険証の問題として、保険証の紐付け誤り、カード読み取り機器の不具合、システム切り替えのコストなどが指摘されているが、その根本的な原因に迫ってみたい。

 マイナンバー制度においては、社会保障と税、災害対策を対象としてマイナンバーを使うことが原則だ。しかし、医療分野におけるマイナンバーの使い方は中途半端な状況だ。その理由は、医療保険の現金給付と現物給付を分けて考えているからだ。

 医療保険の現金給付、つまり保険料の徴収や給付については、マイナンバーを使うと法律で規定されている。しかし、医療保険の現物給付、つまり診療記録など医療記録についてはマイナンバー法における規定がなく、マイナンバーが使えない。

 制度設計時、医療分野においては遺伝疾患など本人以外へのプライバシーに関して特別な配慮が必要であり、マイナンバー法の範疇を超えるという議論になった。結果、医療の現物給付に関してはマイナンバー法とは別に特別法を制定して対処することになった。しかし、政権交代で特別法制定の動きは葬り去られ、マイナンバーを使うべきなのに使えないのが現状だ。

 もっとも、医療の現場では、顔写真付きのマイナンバーカードで確実な本人確認を行い、そのカードと医療記録における被保険者番号を結び付けたいという事情がある。そこで、(マイナンバーが法的に使えないため)カードのチップに格納された電子証明書のシリアル番号を使うという方法を考えた。