交付率が低い高齢女性にどう対応するか?

 マイナンバーカードの交付枚数は1億枚を超え、交付率も80%を上回った。この数字だけを見れば十分保険証への移行も可能だと思えるが、問題は女性の高齢者だ。2年前に政府が発表したマイナンバーカード交付率のダッシュボードでは、女性の場合は高齢になるほど交付率が下がっており、90歳以上では30%を切っている。

 90歳を超えれば外出も難しくなり、スマホでマイナンバーカードを申請するなどできないだろう。このような高齢者に対して政府は「資格確認書」を交付するというが、有効期限が1年間から5年間に延長され、申請が必要から不要へと揺れ動いている。また、顔認証マイナンバーカードとの関係も不明なままだ。

 このような状況では高齢者のみならず、高齢者に対応する医療関係者も大きな不安を抱えるだろう。医療DXを推進し、世界一と言われる日本の医療制度を維持するため、政府は情報弱者に対してより丁寧な対応をしていってほしい。

【榎並 利博(えなみ・としひろ)】
 1981年に富⼠通株式会社に⼊社。⾃治体の現場で、住⺠基本台帳をはじめあらゆるシステム開発に携わる。1995年に富⼠通総研へ出向し、政府・⾃治体分野のコンサルティング活動に従事。2010年に富⼠通総研・ 経済研究所へ異動し、電⼦政府・電⼦⾃治体、マイナンバー、地域活性化をテーマに研究活動を行う。2022年4⽉に行政システム株式会社 ⾏政システム総研 顧問および蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員に就任。
 この間、法政⼤学・中央⼤学・新潟⼤学の各⾮常勤講師、早稲⽥⼤学公共政策研究所の客員研究員、社会情報⼤学院⼤学の教授を兼務。
「デジタル⼿続法で変わる企業実務」(⽇本法令)、「地域イノベーション成功の本質」(第⼀法規)、「共通番号-国⺠ID-のすべて」(東洋 経済新報社)など、マイナンバー、電⼦政府・電⼦⾃治体・地域活性化に関する著書・論⽂や講演等多数。

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