すり切れたスニーカーを使い続けることが最先端の消費スタイル(写真:Troyan/Shutterstock.com)

今、海外の若い世代を中心に「アンダーコンサンプションコア」という消費スタイルが広がっている。SNSを通じた「反・大量消費」や「反・トレンド」のムーブメントだ。いったいどのような背景があるのだろうか?

(杉原健治:フリーライター)

新たな消費スタンス

 余計な物を持たない、消費しない、という考え方といえば、「ミニマリズム」が有名だろう。ミニマリズムを実践し必要最低限のアイテムだけで生活する人々は「ミニマリスト」と呼ばれ、その独特な暮らしぶりはたびたび話題になってきた。

 そして最近では、新たな「アンチ消費」のムーブメントとして「アンダーコンサンプションコア=underconsumption core」という考え方が生まれている。

 アンダーコンサンプションコアとは、“過小消費”を意味する言葉だ。現代社会ではインフルエンサーによる商品紹介動画をはじめ、大量消費を「これでもか!」と言わんばかりに推し進める傾向にある。アンダーコンサンプションコアは、この風潮に違和感を覚えた海外の若い世代の間で誕生した。消費行動をできる限り抑え、ひとつの物を長く使おうとする新たなスタンスとして、SNSを通じて広がりを見せている。

「すぐに新しいものを買わない」という選択

 アンダーコンサンプションコアに関する発信は、主にTikTokで行われていることが多い。「〇〇コア」という言い回しは、最近の日本語の流行語で言えば、「〇〇界隈」や「〇〇系」といった表現に近い。実際、TikTokで「#underconsumption」と検索すると、「同じスニーカーを2年間毎日履き続ける」「6年前に買ったiPhoneを6年間同じケースに入れて使う」といったさまざまな実践方法がシェアされている。

(写真:TikTokより)

 少し汚れたり見栄えが悪くなったりしても、使える範囲であればすぐには買い替えないという消費行動は、これまでも倹約、節約などと言われ特に目新しいものではない。トレンドの移り変わりが早く、大量消費・廃棄社会を象徴する産業となっているファッションでは、「質が高く流行に左右されないお気に入りのアイテムを数点だけ持つ」「古着を活用する」といった消費行動はこれまでもあった。

 だが、アンダーコンサンプションコアの特徴は、TikTokというSNSを通じて、その消費スタイルやノウハウ、工夫を、とにかく明るく楽しく、スタイリッシュにシェアしようという流儀だ。