ムーブメント誕生の背景には若者の経済的負担の増加が

 アンダーコンサンプションコアがSNSで拡大している背景のひとつとして挙げられるのは、若者が抱える経済的負担の増大だ。例えばアンダーコンサンプションコアがいち早く広がりつつあるアメリカでは、インフレによる生活費の高騰が問題視されている。

(写真:TikTokより)

 またアメリカでは進学のために学生ローンを活用するのが一般的だが、返済に苦労している若者も少なくない。アメリカの教育に関するデータの収集を行っているEducation Data Initiativeが公表した資料によれば、学生ローンの負債を抱える利用者は合計4280万人。1人当たりの平均負債額(連邦学生ローンと個人ローン)は4万681ドル(約620万円)に達している。

 経済的に苦しい生活のなかでは、多くのインフルエンサーやセレブが見せる華やかな暮らしぶりをマネすることは現実的ではない。それでも、スタイリッシュには生活したい。昨今のサステナビリティーに配慮する若者の意識の高まりも相まって、大量消費に慎重になるムーブメントが受け入れられるのも、決して不思議ではないのだ。

「反・大量消費」に関するトレンドは以前にも

 アンダーコンサンプションコアに関連したトレンドのムーブメントとしては、2023年頃から流行っている「デ・インフルエンシング」が挙げられる。

 デ・インフルエンシングとは、SNS上で「これは買うべきでない」「これは買う必要がない」といった情報をシェアする動きだ。これまでのインフルエンサーが「これを買うべきだ」という内容とともに、商品やサービスの購買を勧めてきたことに対するアンチテーゼとして生まれた。

 アンダーコンサンプションコアが消費自体の抑制を重要視しているのに対し、デ・インフルエンシングでは消費の方向性を考え直すことに重きを置いているという違いがある。しかしどちらも「不要な消費を推し進める社会・経済構造」に抵抗する動きとして通じるものがある。

 近年では日本でも若者の消極的な消費傾向が見られる。今後アンダーコンサンプションコアをはじめとする「反・大量消費」の生活スタイルは、どこまで拡大していくのだろうか。