国民民主党の玉木代表(写真:ロイター/アフロ)

先の衆院選で玉木雄一郎代表が率いる国民民主党が躍進した背景には、若者からの支持があるとされる。日本テレビ系列と読売新聞社が行った出口調査によると、比例代表の投票先で20〜30代が最も多く投票したのが国民民主党だった。「Z世代」や「マイルドヤンキー」の名付け親として知られる若者研究家の原田曜平氏は、今回の国民民主党の躍進をどうみているのか、話を聞いた。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

若者に訴える政党が国民民主党しかなかった?

──日本テレビ系列と読売新聞社の出口調査︎*1では、20〜30代が最も投票したのが国民民主党でした。20代は26%(自民は19%)、30代は22%(自民は20%)が国民民主党に投票したとのこと。国民民主党は「手取りを増やす」というスローガンのもと、減税や医療制度改革を訴えていました。人口構成上、不利な立場に立たされている若者の怒りがこうした投票行動に影響したのでしょうか。

*1【速報・出口調査】比例投票先 20代と30代は国民民主党がトップ


原田曜平・芝浦工業大学デザイン工学部教授(以下、敬称略):私は20年以上、若者の政治意識を調査していますが、定量・定性データ含め、「若者の政治離れ」が加速度的に進んでいます。事実、国政選挙において、20〜30代の投票率は減少トレンドが続いています。

 彼らはスマホで、プラットフォーマーのアルゴリズムが提供する情報にしか日常的に触れません。「国民民主党ってどんな党?」という程度の知識しかない若者がマジョリティでしょう。 

出所:衆院選の年代別投票率。総務省のホームページより
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 そもそも若者の政治への関心が低下しているなか、なぜ国民民主党は20〜30代の支持を獲得したのでしょうか。私は、大きく3つの理由があると考えています。

 1つは、「103万円の壁」を解消すると明言したこと。私が大学生たちに「国民民主党って知っている?」と聞いたところ、ほとんどの学生は「知らない」と答えましたが、「『103万円の壁』については?」と聞くと、「大問題だ」と答えています。

 少なくとも、アルバイトをしている大学生のほとんどが、親の扶養から外れないことを目的に年収103万円を超えないように就労調整しています。実際に若者が困っている課題に対して国民民主党はアピールできたことから、大学生に対しての訴求力は非常に高いと言えるでしょう。この問題に関して積極的に言及した政党は他にありませんでしたから。

 2つ目は、「ネット戦略の巧みさ」。実は私は、2010年代後半から主要政党に頼まれ、若者の票を獲得するために必要なSNSの使い方などをレクチャーしていました。ハッキリ言って、自民党の大物政治家を含め、若者へのアピールの仕方を彼らは全く理解していません。若い人が日常使いするInstagramやTikTok、YouTubeのショート動画などのできはひどいものです。