なんでも「パーソナル診断」の若者にウケた
原田:その中では、私は2019年から「国民民主党の玉木代表はSNSの使い方が非常に上手い」と評価していました。当時、彼の知名度は今と比較すると非常に低かったのですが、学生に評価させると「玉木さんと安倍さんのSNSが最も自然だ」というものでした。
実際、今回の選挙戦でも、若者に訴求力がある「ReHacQ」や「NewsPicks」といった媒体の露出を増やしていました。ホリエモンやひろゆきといったインフルエンサーとの対談動画も再生数が回っています。
動画の「切り抜き」戦略も俊逸でした。国民民主党の内部に切り抜き動画をつくるチームがあり、彼らが量産した短い尺の切り抜き動画がSNSで急速に拡散されました。
3つ目に、ネットで質問に答えるだけで投票先の政党をアドバイスしてくれる「政党パーソナル診断」に、国民民主党の政策は適していたこと。現代の若者の投票行動として特徴的なのは、広く新聞などを通して各党の政策を吟味するのではなく、「選挙ドットコム」というような投票マッチングサイトを通して「自分に最も合う政党は何か」を判断することです。
他の政党が若者の経済政策に対して優先順位が低かったのに対し、国民民主党は「103万円の壁を引き上げる」「社会保険料の軽減」「消費税を5%に軽減」など、具体的に若者の懐を豊かにする政策を打ち出していました。パーソナル診断をした若者のマッチング結果として、国民民主党が多く表示された可能性はあるのではないでしょうか。
主要政党は本当に理解していませんが、今の若者はパーソナル診断を日常的に利用します。例えば、自分に合う色を決める「パーソナルカラー診断」や「骨格診断」、「髪質診断」など枚挙にいとまがありません。
逆に言えば、若者の支持を取り付けたければ、主要政党も若者にアピールする政策を打ち出すべきでしょう。投票率が低い中、国民民主党が若者票を「独り占め」できたのは、こうした戦略が背景にあるのです。
──20代の学生が「103万円の壁」に反応するのは分かるのですが、30代はどうでしょうか。子育てをしている中で、物価高が襲い、経済政策について関心を持つようになったという可能性はありませんか。