美容にこだわりすぎると思わぬリスクも(写真:PeopleImages.com - Yuri A/Shutterstock.com)

外見で人を判断・差別する「ルッキズム」への批判が高まる一方で、海外のZ世代を中心に「ルックスマクシング」というムーブメントが広がっている。自身の外見を最大限に魅力的にするこの試みは、SNSを通じて急速に拡散。しかし、科学的根拠に乏しい美容法や美への過剰な執着など、問題点も浮き彫りになってきた。日本でも男性の美意識が高まるなか、ルックスマクシングの実態とリスクを探ってみよう。

(杉原健治:フリーライター)

海外の若者の間で流行する「ルックスマクシング」とは

「Looksmaxxing(ルックスマクシング)」とは「Looks(外見)」と「maxxing(最大化する)」を組み合わせた造語で、自身の外見を徹底的に磨き上げる試みを指す。スキンケアやファッションはもちろん、美容整形まで視野に入れて、あらゆる手段を駆使して見た目の向上を目指している。

 実はルックスマクシングという言葉自体は、10年ほど前から存在していた。海外の掲示板で広まっていたこの概念が、TikTokなどのSNSの普及により一気に拡散。「男らしさ」を追求する若い男性を中心に、急速に支持を集めている。YouTubeやTikTokで「Looksmaxxing」と検索すれば、ビフォーアフター動画が山ほど見つかるだろう。その数々の投稿が、このトレンドの勢いを如実に物語っている。

ルックスマクシングの2つのアプローチ

 ルックスマクシングのアプローチは、大きく分けて「ソフト」と「ハード」の2つ。ソフトアプローチは、自身の努力で実現を目指すものだ。主に筋トレやダイエットによる体型維持、入念なスキンケアやヘアケア、洗練されたファッションへの気配りなどが含まれる。

 さらに、あまり聞きなれない独特の美容法もある。例えば、「ミューイング」は舌を常に上顎につけることでフェイスラインを引き締めるとされている。「チューイング」は、しっかりと噛んでエラを発達させることで、骨格の美しさを追求するものだという。

 一方、ハードアプローチは自分以外の外部の力を借りて美しさを手に入れる。その代表格が美容整形だ。