FRBに待ち受ける理不尽な仕打ち

 トランプ前政権同様、金融・通貨政策に関して言えば、トランプ氏はリフレ的要素が色濃い政策を展開しながら、低金利やドル安への志向を吐露するという支離滅裂な言動を繰り返すことが予想される。

 一方で、上述するように、最終的には拡張的な財政政策や輸入単価を引き上げる通商政策、労働需給をひっ迫させる移民政策などが相まって、米国経済の一般物価はどうしても過熱しやすくなる。通貨・金融政策は、これらの政策に対して事後的に決まるに過ぎない。

 この点が重要である。トランプ氏が低金利やドル安を希望しても実体経済がそれを許すかどうかは別次元の話だ。

 トランプ氏の希望するポリシーミックスが実現すれば、米金利とドルの相互連関的な上昇は発生しやすく、ハト派路線を歩み始めたばかりのFRBの政策運営がナローパスを強いられる恐れはかなり高い。極端なシナリオとして「不況下の物価高(スタグフレーション)」も警戒を要するだろう。

 前回政権の教訓を踏まえれば、トランプ氏の政策でインフレが下がらないのに、パウエルFRB議長がトランプ氏から叱責を受けるという滑稽な構図はいかにも予見されるものである。

 市場参加者にとってはそうした思惑主導の値動きがどうしても主題になりやすいが、日本にとっての喫緊の関心事は、やはり実現の確度が高そうな追加関税である。多額の対米貿易黒字を抱える日本の円安修正がままならない現実を前に、トランプ氏が着想するのは「追加関税でこらしめる」という結論に違いない。