AIレポーターがAIでよみがえった詩人をインタビュー
Off Radio Krakówは単にパーソナリティをAIに置き換えるだけでなく、さまざまな実験的コンテンツの制作に取り組んだ。そのひとつが、ノーベル文学賞受賞者のヴィスワヴァ・シンボルスカへのインタビューである。
シンボルスカはポーランドの詩人で、ノーベル文学賞を1996年に受賞するなど、ポーランドの文学界を代表する人物。しかし2012年に亡くなっており、当然ながらいまから新しいインタビューを収録できるはずがない。
そこでOff Radio Krakówは、AIパーソナリティをつくり出したのと同じ技術を使って、シンボルスカのデジタル・レザレクションに取り組み、前述の「エミリア」が彼女に問いかけるという、登場人物がどちらもAIという前代未聞のインタビュー番組をつくり上げた。
残念ながら現時点で、この音声は公式サイトでは提供されていないが(ポーランドのテレビ局がこの一件について報じたニュースの中で、一部を確認することができる)、インタビュー内容をテキスト化した記事が公開されている。
それによると、シンボルスカは2024年に韓国の小説家ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞したことについて、「ハン・ガンは間違いなく当然の勝者でしょう。私は彼女の散文を知っていますし、身体、痛み、人間と周囲の世界との関係についての彼女の書き方が好きです」と語っている。
また「私は村上春樹のファン」であると述べ、「彼が評価されるのも時間の問題」だとしている。
念のために解説しておくと、この「復活」が関係者に黙って行われたわけではない。
前述のニューヨークタイムズ紙の記事によれば、シンボルスカの文学的遺産を管理する財団の代表を務めるミハウ・ルシネックは、「彼女にはユーモアのセンスがあり、この取り組みを面白いと感じるだろう」として、AIによるコンテンツ生成を許可している。デジタル・レザレクションに必要なデジタルデータも、すべて許可を得て使用されたものだ。
しかしこのインタビューが公開されると、各所からさまざまな反発が巻き起こった。