2011年以降はオウム真理教教団内のサリン製造の中心人物で、教団が起こしたVXガス殺人事件にも関与した死刑囚と、刑の執行直前まで研究目的で面会を重ね、著書『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』(角川書店)などで事件の真相に迫った。
金正男暗殺事件の手法を早くから指摘
また2017年、マレーシア・クアラルンプール国際空港内で起きた金正男氏暗殺事件の際、神経剤VXが顔面に塗布された方法については米情報機関から見解を問われ、現場の映像から「実行女性2人により、順次異なる種類の薬品を顔面上で混合させ、混合後に毒性が発揮される手法であった」と分析。果たしてその見立て通りであったことから、改めて世界の軍関係者らから注目された。
2007年から2013年にかけ、大阪、京都、兵庫3府県を舞台に、女性が夫や内縁関係にあった高齢男性3人を、青酸化合物を飲ませて殺害し、1人が青酸中毒になった「関西青酸連続死」事件(後妻業事件)に関しても容疑者(後に死刑囚)の弁護士から助言を求められ、「4件のうち2件は被害者の体から青酸カリが検出されており殺人と断定できるが、残り2件は青酸カリを検査、検出していないので殺人と断定するのは困難」との見解を提示するなどで関わった経験も持つ。
また2020年に感染拡大したコロナ禍では「未知のウイルスに対し警戒心を強く持つべき」だとして、日本政府にも病院船建造を進言するなどしていた。
生活拠点はハワイ・ホノルルとサンフランシスコ郊外のサンマテオ、コロラドの3カ所あり、長年コロラド州立大学の教員を務め、同大名誉教授でもある縁から晩年は家族のいるコロラドでの滞在が中心に。腎臓に疾患を持つため概ね2日に1回の人工透析を受けていたが、杜氏の家族らによると10月下旬に関連の手術を受け、本人の強い希望で手術直後の10月26日、家族が同行しハワイ・ホノルルのコンドミニアムホテルに移った。
同行の家族はホノルルでの人工透析環境を整えたうえで10月29日にいったんホノルルを離れたが、杜氏は11月1日の人工透析の後ホテルの自室で日本人の知人や家族との電話による短い会話を交わしていたが、現地2日になってホテルスタッフが部屋で死亡している杜氏を発見した。
詳しい死因や死亡時刻などは現地司法当局が調べているが、現地1日の夜から2日の未明にかけ、自室で心不全などをおこしたものと推測されている。