(ジャーナリスト:吉村剛史)
中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症のパンデミックは、米中覇権争いの最中に浮上し、人類社会への大きな脅威となった。そうした中、世界保健機関(WHO)から締め出されながらも厳格な水際防疫対策を展開し、完璧ともいえる成果をあげた台湾にとって、この未曽有の厄災は、その優れた「防疫能力」を世界中に知らしめてくれたと言えるだろう。
高い危機管理能力を示した蔡英文(民主進歩党)総統は、5月20日、第十五代総統・副総統就任式で、中国が呼びかける「一国二制度」を改めて否定。新副総統に医師で元行政院長(首相に相当)の頼清徳氏(60)を配し、2期目の政権運営に船出した。中国の圧力をも追い風にして、今後も国際社会でいっそう存在感を増すとみられる。
一方、これを機に日本は、「親日的」という従来のイメージ先行の台湾観からの脱却を迫られるだろう。日本は台湾との良好な関係がありながら、今回その防疫面での実力を見落とし、初動で参考にできなかった。台湾は、対中情報収集力などで日本が想像する以上の実力を持っている。蔡英文政権2期目のスタートと同時に、改めて台湾の実像を直視する必要が生じてきそうだ。
台湾プロ野球、すでに「観客あり」で開催
5月8日、台湾プロ野球(CPBL)は、台北近郊・新北市の新荘野球場(富邦vs統一)や台中インターコンチネンタル野球場(中信vs楽天)で、今季初めて観客を入場させた試合を開催。ファンは目前で展開される熱戦に声援を送った。
現地メディアによると、入場に際し観客は氏名を申告。検温や2週間以内の海外渡航歴のチェックなどがあり、マスク着用は必須。上限1000人の制限付きだったが、4月12日に無観客で今季プロ野球公式戦を開幕させたことに続き、「観客あり」のゲーム開催は世界に先駆けての快挙で、台湾が感染症封じ込めに成功しつつあることを改めて印象づけた。