(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
文在寅政権は、日韓関係において歴史問題にこだわり、元慰安婦問題、元朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる「徴用工」問題)など、既に解決済みの問題を繰り返し持ち出し、日本側から新たな譲歩を引き出そうとしてきた。
しかし、こうした問題は日韓請求権問題の根幹に触れる問題であり、日本側が取り合うはずもなく、現在も宙に浮いたままの状態となっている。
尹美香疑惑に当惑する韓国の政府与党
そうした中、元慰安婦・李容洙(イ・ヨンス)さんが、正義記憶連帯(以下「正義連」。旧称・韓国挺身隊問題対策協議会[挺対協])の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長が寄付金を慰安婦のために使わず、私的に流用したのではないか等の疑惑を提起したため政府与党は当惑した状態になっている。
当初、与党は正義連とその元理事長を庇う姿勢をとり、「この問題を積極的に取り上げるのは親日勢力の野党・未来統合党と保守メディアだ」と逆に批判するような有様だったが、尹氏の疑惑が深まるにつれ、このまま静観できないとの雰囲気が広がってきた。市民団体の告発を受け検察が動き出したことも、政府与党を焦らせたはずだ。