まさに貫禄十分、「台湾の母」という雰囲気だった――。
台湾時間の5月20日午前9時から、蔡英文(Cai Yingwen)総統と頼清徳(Lai Qingde)副総統の就任式典が、台北市内で行われた。正式名称は、「中華民国第15代総統・副総統就職典礼」。
1月11日、蔡英文総統は817万票という、台湾憲政史上最高得票数を得て、再選を果たした。私はこの選挙を現地で取材し、その模様は新著『アジア燃ゆ』(MdN新書)に詳述したが、一言で言えば蔡英文総統は、「NO CHINA」を貫き通す選挙戦を展開したのだった。
「皆さん、今日香港で起こっていることが、明日台湾で起こってもよいのですか?」――蔡総統は選挙演説で、香港の民主化デモにかこつけたセリフを連発し、大いに士気を高めた。そして総統選挙の後は、その勢いのままに、新型コロナウイルスの災禍に対しても「NO CHINA」政策で臨んだ。そして感染者440人(うち国内感染55人)、死者7人という「台湾の奇跡」を実現。いまやこの「ダブル勝利」によって、権力の絶頂の秋(とき)を迎えている。
周囲の態度が4年前とは一変
私は4年前と同様、インターネットの生中継で就任式典を見た。前回の蔡総統の様子は、四角四面の学者然としていて、実にぎこちないものだったが、今回は自信に満ち溢れていた。また、周囲の蔡総統を見る目や、接する態度も、4年前とは激変し、敬意に満ちているのが感じ取れた。