新型コロナウイルス感染拡大の経緯について独立した調査が必要と提起し、中国の猛反発を受けているオーストラリアのスコット・モリソン首相(写真:AAP Image/アフロ)

 中国はオーストラリアが憎いわけでは、決してない。中国人はコアラもビーフもワインも大好きだ。憎いのは米ドナルド・トランプ政権である。だが、GDPで自国の1.5倍もあるアメリカを叩くと夥しい返り血を浴びるので、GDPで1割しかないアメリカの盟友オーストラリアを叩く――この論法を中国側は否定しているが、いま起こっているのは、まさにそのようなことだ。

中国を怒らせたモリソン首相のひと言

 もともとは、オーストラリアのスコット・モリソン首相が4月23日の会見で述べたひと言が、発端だった。

「新型コロナウイルスの感染拡大の原因に関する国際的な調査を行い、WHO(世界保健機関)の全加盟国がこれに協力すべきだ。中国もこの目標に協力することを望む」

 モリソン首相は、前日にトランプ大統領と電話会談を行い、フランスやドイツなどとも共有した提案だと述べた。要は感染源である中国の責任を追及し、謝罪と賠償を求めようということだ。

 これに対し、中国外務省の耿爽(Geng Shuang)副報道局長は同日の定例会見で、オーストラリアに猛抗議した。

「オーストラリアが提案した、いわゆる独立した調査というのは、実際には政治的操作だ。オーストラリアは、イデオロギー的な偏見を捨てなさい!」

 中国は同日、WHOに3000万ドルの追加寄付を行うとも発表した。