ファーウェイに対する締め付けを強化したトランプ大統領。左はメラニア夫人(写真:ロイター/アフロ)

(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)

 米政府が、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する締め付けを強化している。

 5月15日、ウィルバー・ロス商務長官が声明を出し、今から1年ほど前に米企業とビジネスをできなくするブラックリストに追加したファーウェイに対して、さらなる制裁強化を発表した。これまでは中国への輸出製品などに含まれる米国製部品などの割合が金額ベースで25%以下であれば中国との取引ができるという「抜け穴」があったが、それも禁じる措置を取った。これまで制裁措置にも強気の姿勢だったファーウェイも、同社が依存する台湾積体電路製造(TSMC)など外国産の半導体などが入手できなくなる可能性が高く、大打撃となりそうだ。

 2月頃から米政権内で検討されてきたこの措置だが、日本企業にもファーウェイに部品を提供している企業が少なくなく、そうした企業にも今後影響が及ぶ可能性もある。

 新型コロナで世界が混乱している今、こうした動きに出た米国にはどんな思惑があるのだろうか。

米NSAは2009年ごろからファーウェイトップを「監視」

 そもそも米政府のファーウェイ攻撃は、米中の覇権争いの一環であるが、ここまでの経緯を簡単に振り返りたい。

 米国のファーウェイに対する不信感は、ファーウェイが米国に進出した2000年代にまで遡る。当時から、ファーウェイは米国企業から知的財産を盗んでいると指摘されており、訴訟沙汰になって敗訴したこともある。

 そんな中、米政府は2009年頃からファーウェイが中国政府とつながっていると疑う。そして米諜報機関のNSA(国家安全保障局)が同社へのスパイ工作を開始し、任正非CEOの電子メールや内部文書を監視するようになった。

 米下院情報委員会は、監視活動で得た情報などを元に2012年に声明を発表。ファーウェイなど中国企業が、安全保障の脅威になっていると非難するに至った。2014年には、正式に米政府機関などでファーウェイが入札に参加できないような措置を取り、さらに2018年には米国防権限法によって、ファーウェイなどの機器の米政府や関係機関での使用を全面的に禁じ、2019年5月には米市場から完全に締め出すと発表した。