ロシアがウクライナに侵攻して以来、ロシアには核兵器ばかりでなく生物兵器や化学兵器の使用可能性が付きまとってきた。
キーウ占領に失敗した直後、ウラジーミル・プーチン大統領が特殊部隊の準備を命じたことから、核兵器の敷居が下がったといわれ、今にも使用されるのではないかと緊張が走った。
しかし、核兵器は出現直後に日本に使われただけである。
米欧の首脳が核兵器の使用には大きな代償を伴うとプーチンに圧力を加えたこともあるが、やはり核兵器の使用は敷居が高いと言える。
こうしたことから、生物兵器や化学兵器(以下生物・化学兵器)、中でも化学兵器使用の可能性が侵攻後の数か月間は盛んに言及された。
米国のジョー・バイデン大統領も「ロシアからの化学兵器のいかなる使用もNATO(北大西洋条約機構)から同等の反撃を見るだろう」と牽制した。
侵攻から9か月が過ぎた今日、米欧からの近代兵器支援でウクライナ軍が優勢に立ち、ロシアの後退が続いている。
そこでロシアが核兵器を使用する可能性について再び言及されるようになっている。
トルコの首都アンカラで11月中旬、米国のウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官とロシアのセルゲイ・ナルイシキン対外情報局(SVR)長官が会談した。
ホワイトハウスはロシアが核兵器を使用した場合の結果に関し警告するためと発表した。
逆に生物・化学兵器についてはほとんど語られないが、ロシアが使用する危険性はないのだろうか。
プーチンはこれまでどのように語ってきたか。そして、ロシアの生物・化学兵器の状況はどうなっているかについて考察する。