抽選で福大大濠高の柴田獅子の交渉権を獲得した日本ハム・新庄剛志監督(左)とソフトバンクの小久保裕紀監督=10月24日午後、東京都内のホテル(写真:共同通信社)
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NPBのドラフト制度導入の狙いはコストカット

 本連載のここまでの記事でも触れてきたように、1965年にMLBと同じタイミングで始まったNPBの「ドラフト制度」のコンセプトは、MLBとは似て非なるものだった。

 MLBはクローズドリーグ(入れ替え戦のないリーグ)の宿命として、強者と弱者の格差が広がり、ペナントレースの魅力が失われることを憂慮して「戦力均衡」のためにドラフト制度を導入した。だから前年の下位チームから選手の指名権がある「ウェーバー制」をとった。

 しかしNPBは「選手獲得コストがかかりすぎる」ことが問題だとしてドラフト制を導入した。各球団が同じタイミングで選手を指名し、指名権を確定させることで「入札合戦」によって選手の契約金が吊り上がることを阻止しようとしたのだ。だから「ウェーバー制」ではなく、有望選手に指名が集中した際は「くじ引きにする」という形にした。

 率直に言ってセ・リーグは「巨人一強」であっても、その余得で他球団も潤うのであればそれでいいと言うのが本音だった。そしてパ・リーグ球団の親会社の多くは「できれば球団経営をやめたいが、撤退すると業績が悪化しているように見られる」ため、体面を繕うために球団を維持していたに過ぎない。ドラフト制度は「コスト削減」のためだったのだ。

 しかしながら、そういう形で不完全なままでスタートしたドラフト制度であっても、ひとたび、その制度が機能し始めると、日本のプロ野球は大きく変化した。

 その象徴的なドラフトが、1968年のドラフト会議だった。