質の悪い僧侶は、AIの登場によって「退場」を迫られる

「元ヤン僧侶」を選ぶと、少し軽い印象を受けるがその問答はなかなか本格的といえる。なぜなら、10年間に及ぶhasunohaでの運用実績をベースにして、回答の方向性や相談者への寄り添い方などをAIに学習させているから。

 hasunohaは、月間100万件ほどのアクセスがあり、回答する僧侶の登録者数は300名超いる。そのデータが、うまく活かされているのだ。

 hasunohaでは、「相談したい人に対して、回答してくれるお坊さんの数が足りない状況が7年間も続いている」状況を改善するため、比較的シンプルな質問はAI僧侶が解決できる仕組みをつくりたいという。同時に、若い年齢層の人が仏教や寺とリアルに接するきっかけになることを目指しているという。

 いま、まさに「仏教×生成AI元年」といえる局面にある。一方で、「慈悲の実践」といった、宗教空間や宗教者との関係の中で生まれる高度な「慰め」や「癒し」などには、生成AIでは、まだ手が届いていないのは事実だ。生成AIでは、「テキスト(や音声)ベースでの導き」が限界だ。

 一方で、こういう見方もできる。「実際の宗教の現場で、上記ChatGPTの回答のように端的かつ分かりやすい言葉を示せる僧侶は、どれだけいるだろうか」。

 勉強不足、コミュニケーション下手の僧侶よりは、はるかにChatGPTのほうが上手である。質の悪い僧侶は、AIの登場によって「退場」を迫られることもあり得る時代なのだ。

 シンギュラリティ(AIが人間の知能を追い越す)の時代を迎えても、宗教者がAIに取って代わられるのはずっと先だと言われていたが、その時は着実に近づいてきている。