「仏教哲学コンサルティングサービス」も
仏教では、人間が根源的に抱いている「苦」のひとつに「愛別離苦(あいべつりく)」があると説く。つまり、「愛する人と別れなければならない苦しみ」のことである。
しかし、その先にある解決法「ではどうすれば、その苦しみから逃れられるか」までは、ネット検索では十分に対処できない。「仏教2500年の歴史と、叡智を駆使した回答」ができるところにこそ、宗教者の存在意義がある。しかし、ChatGPTでは、その壁も乗り越えつつあるようだ。
このChatGPTの公開に先んじる形で2021(令和3)年、京都大学発のスタートアップ企業テラバースが「ブッダボット」を開発している。
ブッダボットとは、現代人の悩みや社会課題に対して仏教的観点から回答してくれる仏教対話AI。最古の仏教経典『スッタニパータ』から抽出したQ&Aリストを、AIに学習させた。スマホ上にブッダのデジタル画像が浮かび上がり、「生きづらさをどう乗り越えればよいでしょうか」などの悩みに回答してくれる。
同社は、この技術を発展させ、さらに2022(令和4)年、企業の上司や仏教学者らの知見を取り入れた「仏教哲学コンサルティングサービス」も始めた。これは「仕事が辛い」など、企業の従業員の悩みに対し、仏教の教えに基づいてAIが解決してくれるものだ。
この時点ではAIによる回答が、ビジネスパーソンの悩み解決につながるかどうかは、未知数であった。正直なところ、まだAIが宗教者に取って代わるレベルまでは至っていないように思われた。
しかし、AIと仏教とが、かなり接近してきていることを実感できたのが、僧侶が答えるお悩み相談サイト「hasunoha(ハスノハ)」が提供する仏教とAIを融合させた「AI僧侶問答」のサービスである。2023(令和5)年11月にスタートさせている。GPT-4を搭載したAI自動生成によるQ&Aシステムとなっている。2分で回答が可能で、誰でも無料で利用できる。
回答するAI僧侶は複数のパターンがあり、好みに合わせて選べる仕組み。「優しいお坊さん=丁寧な言葉を使って語ってくれる」「元ヤン僧侶=喝が欲しい、叱って欲しいなどの人におすすめ」などが用意されている。
たとえば以下のような質問を「元ヤン僧侶」に投げかけてみた。