ロシアに接近する一方、中国を無視
昨年秋になって、北朝鮮に「神風」が吹いた。長引くウクライナ戦争で武器と兵力を消耗したロシアが、「三顧(さんこ)の礼」で擦り寄ってきたのだ。金正恩委員長は、「渡りに船」とばかりに、ウラジーミル・プーチン大統領の誘いに乗った。
武器と兵力がほしいロシアと、核ミサイルの最新技術がほしい北朝鮮は、まるで凹凸のようにハマった。こうして今年6月19日、プーチン大統領が24年ぶりに訪朝して、「包括的戦略パートナーシップ協定」を締結した。
そして10月、朝鮮人民軍はついにウクライナ戦争の最前線に投入され、ロシアの技術を身にまとったICBMが、日本海に放たれた。いよいよ次は、ロシアの技術を受けた核実験である。
こうしたロ朝の動きに、腹の虫が治まらないのが、中国である。10月14日、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相を北京に呼びつけ、董軍国防相が一日がかりで「事情聴取」した。10月30日には、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官を北京に呼びつけ、王毅外相が同じことをやった。おそらく北朝鮮の幹部も北京に呼びつけようとしているのだろうが、北朝鮮側が応じないに違いない。
ミサイルの発射実験は黙認するが、核実験は絶対に許さないというのが、習近平政権の一貫した立場である。そんな中国の意向を無視して、北朝鮮が7度目の核実験を強行した場合、中朝関係に深い亀裂が入るだろう。東アジア情勢は、来週に迫ったアメリカ大統領選の結果とともに、重大な岐路に差し掛かることになる。