トンネル工事をいかにしやすくするか

 リニアは険しい山の中を通ることになっていて、そのためトンネルが多用されている。同じ山にトンネルをうがつなら、標高が高いほうがトンネルが短くて済み、建設工事はしやすい。そこで山登りを要請されているとのこと。

 だが結構きつい勾配であっても、リニアはぐんぐんと速度を上げてゆく。リニアモーターの強烈な推進力を実感した。

 強力な加速を生み出すのがリニアモーターだ。これは車体側と、軌道側のコイルで構成される。

 車体側には超伝導コイルが付いている。この超伝導体の材料はイットリウム系やビスマス系の酸化物超伝導体ということだ。もう30年以上前になるが、私が大学で物理を学んでいたころに、次々に発明されて高温超電導体の臨界温度の高温記録を塗り替えていた材料だ。

 その後、技術開発が進んで、ついにリニアでも実用化されることになった。こうした最先端技術が、新幹線で培った既存の技術と組み合わさって、リニアというイノベーションが進んでゆく。

 リニアモーターを構成するもう一方の側は、コンクリートの箱できたリニアの軌道の左右に張り付けられたアルミのコイルである。これには推進用のコイルと浮上用のコイルがある。

 車体も主にアルミでできているから、アルミを敷き詰めた上で、アルミの車体が浮上して飛んでいく感じだ。こう考えると、ハイテクいっぱいの高尚なリニアが、なんだかアルミホイルの上をビール缶が飛んでいくような、どこぞの野外バーベキュー風景みたいな、安直なイメージになってしまった(この方が親しみは持てるが)。

 電力は、東京電力の送電線から、リニア専用の変電所を介して供給される。リニア実験線の乗り場からすぐ見える変電所がそれだ。大雑把には、周波数がリニアの走る速度に比例し、リニアを動かすエネルギーは電流に比例するとのこと。